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宇宙工学と臨床工学~いざ、宇宙へ~

2024.3.11

コラム

このコラムは「宇宙工学と臨床工学~JAXAこうのとりプロジェクトマネジャ経験を踏まえて~」の続きです。

未読の方は、こちらをクリックして前回のコラムから順にお読みいただくのを推奨します。


3.6 製品を完成する

H-3ロケット2号機(2023/2/17)ⒸJAXA

このコラムも最終回となりました。

写真はH-3ロケット1号機失敗後の、リベンジ、2号機の打ち上げです。

無事に成功しました。

不具合原因は特定できませんでしたが、考えうる要因についてすべて対策が打たれました。

余談ですが、今回のコラムの出稿は、この結果を待っていました。

さて、臨床現場で用いる医療機器も、宇宙で用いる宇宙機器も、コンピュータによる自動化やロボット化により、多くのの労力の省力化が図られるようになりましたが、人に頼らねばならないことも多く残っています。

前回まで、機器の設計段階での安全の確保のお話をしてきましたが、最後に、機器が想定通りに性能を発揮するようにできているかを確かめる必要があります。

人に頼るか頼らないも含めて、実際に試験や計算(解析と言います)などによって調べます。

この作業を検証(verification)と言います。


ここでは試験の話をしましょう。

製品が設計通りに作られているか、まず、部品レヴェルから始め、機器レヴェル、サブシステムレヴェル(電力、通信、構造などのサブシステム)、そして、システムレヴェルで検査します。

その後に、機能、性能を調べる試験を行います。

使うもの(供試体と言います)は、フライト品と同等のものを用います。

宇宙では、この一連の作業を製品の認定試験(qualification test)と呼び、実際に使われる時より厳しい試験をします。

例えば、ロケットエンジンでは推力や混合比(燃料と酸化剤の割合)を変えて燃やします。

燃焼時間も実際の時間より長く、累積で4倍程度の試験をします。

また、飛行中の振動環境を模擬して、振動試験を行います。

衛星などは宇宙空間での真空環境下での低温、高温環境を模擬した試験(熱真空試験と言います)も行います。


システム試験には2つの原則があります。

その1、「飛ばすように(衛星なら、宇宙での使用も考慮)試験して、試験したように飛ばす」。

その2、End-to-endで試験をすること。

実際の製品を用いて、指令(command)が末端の機器(effecter)を想定通り動かすかを調べるのです。

これをパスして、打ち上げに進みます。

医療機器開発でも同じです。想定される全てを試験します。



最後に、世界の宇宙開発は今、月、火星基地建設に向かっています。

やっと人類が、母なる地球をあとにするのです。

その後、いつの日か太陽系を後にするでしょう。


下図は、太陽系を飛び出す衛星に載せられたプレートです。

高度な文明を持った宇宙人が拾えば、地球が天の川銀河のどの位置にあるのかが、わかるようになっています。

人間の大きさや外観もあります。

いつの日か「エイリアン」からメッセージが届くことを期待して、終わりとします。

パイオニア探査機の金属板 ⒸNASA

小鑓 幸雄

滋慶医療科学大学 教授

工学博士/元JAXA(宇宙航空研究開発機構)こうのとりプロジェクトマネージャ

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