1.多様性 (diversity)とその相乗効果(synergy)
これは本学の建学の理念の一つです。
多様性は、文化的、社会的、人類学的などあらゆる領域や背景に存在します。
医療現場での臨床工学技士は、医療の専門化、高度化、細分化に伴い、患者の臨床現場でのケアーなど、属性に応じて、様々な状況に臨機応変に適切に対応する必要があります。更にこの多様性の特徴を融合して医療効果を高めあう努力が求められています。
この実現に向けた取り組みの一つとして、滋慶医療科学大学では、様々なバックグラウンドを持つ教員を有しており、学生の幅広い分野の専門能力の涵養、更に、伸ばす枠組みが準備されています。
臨床工学は、医学と工学の融合した分野です。両方の専門知識を学ぶ必要があります。
さて、私のバックグラウンドは、工学分野。特に、宇宙工学や宇宙開発の現場です。
ロケットや衛星の開発に用いられるプロジェクトマネジメント手法や、システムズエンジニアリング(systems engineering)手法は、医療機器の開発、保守管理、信頼性、安全性の確保に応用できます。
まさに、多様性実現とその相乗効果のために着任してきました。
さて、ここでは、宇宙開発におけるプロジェクトマネジメントについて、簡単に紹介しましょう。
2.プロジェクトマネジメント
プロジェクトチームとは、定常的に置かれている人事部とか、営業部とかの部署とは別にある目的、言い換えれば特定の目的やミッション達成のために臨時(ad hoc)に設けられる組織です。役目が終われば解散です。
例えば宇宙ステーションに物資を輸送する宇宙機の開発を例に取りましょう。
6.5トンの物資を届ける大型輸送船です。これは大規模プロジェクトで、予算規模が数百億円程度の例です。
開発遂行自体がプロジェクトで、プロジェクトを実行するのがプロジェクトチームです。
チームを引っ張るのが、プロジェクトマネージャです。通称プロマネです。
プロマネはプロジェクトを遂行するためのマンパワー、時間(スケジュール)、資金などのリソース管理を行います。
また、プロジェクト内組織として、プロジェクト管理を行う部署、各ハードウェア、電力、通信システムなどの開発に責任を持つファンクションを設置し、担当ファンクションマネージャを任命します。
プロマネは、常に、チーム員の専門能力の向上に気を配るとともに、チーム員の士気morale)を維持し、ベクトルを揃えてチームの成果を大限引き出す努力が必要です。このためには組織内外からの強い信頼感を得る必要があり、日ごろのコミュニケーションが大切です。
プロマネのもう一つの仕事として対外(組織内、組織外、役所、マスメディアを含む)調整窓口業務があります。これは想像以上にタフな業務です。
さて、実際にプロジェクトを動かすには、システムズエンジニアリング手法が必要です。
有人機に不可欠な安全、信頼性設計などを含めて、別の機会とします。
小鑓 幸雄
滋慶医療科学大学 教授
工学博士/元JAXA(宇宙航空研究開発機構)こうのとりプロジェクトマネージャ