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医療現場の災害対策と臨床工学【後編】~災害時の具体的な対応について~

2024.1.25

コラム

前回の記事では、⾎液透析の災害時における特殊な環境と BCP と臨床⼯学技⼠の役割についてご紹介しました。

今回は具体的にどのようなことを⾏うのか⾒ていきたいと思います。


災害時に特に大きな問題となるのは水(断水)と、電力(停電)です。

過去の震度6以上の震災では、電力が80%程度まで復旧するのは約2日間程度ですが、水道の復旧は2日間では30%程度となっています[1]

東日本大震災[1]を参考に著者作成

阪神・淡路大震災[1]を参考に著者作成
水道および電力: 復旧率=(延べ停止戸数-停止戸数)/延べ停止戸数
ガス : 復旧率=(復旧対象戸数-停止戸数)/復旧対象戸数)

遮断された場合は復旧までの間、電力であれば非常電源設備、水道であれば貯水槽の水を使用することになります。

非常発電設備

貯水槽

電力では商用電源の受電方式、非常電源設備の種類・発電容量・発電可能時間・発電用燃料の備蓄量・調達方法、外部からの給電方法などの情報を元に、各部門で必要な電力量と血液透析で使用できる電力量の把握、透析モードの切り替えによる電力量の節電などを考えます。

水道では貯水槽の容量から透析可能な人数・回数の把握、透析モードの切り替えによる節水、他部門での使用量の把握、外部からの給水方法の確認などが必要です。

また、災害対策には自助(施設ごと、一人一人の対応)、共助(地域での相互支援)、公助(政府や公的機関による支援)があり、自施設だけでは対応できなくなった場合には地域や公的機関による支援を受けたり、他施設への支援が可能な場合は支援を行うことも想定します。

その他にも患者、スタッフの安全確認、通信手段の確保、地域ネットワーク体制への参画など多くの役割があります。

また臨床工学技士は血液透析以外の人工心肺や人工呼吸器などの生命維持管理装置や医療機器全般にも対応する必要があります。

患者さんやスタッフの状況、地域の支援状況などを把握しながら自施設の被害状況も把握しつつ、被害を受けていない設備でどこまで医療が提供できるのかを提案することが求められます。

今年元旦に発生した能登半島地震のように地震はいつ起こるか分かりません。災害が発生した時に、医療機器の専門知識を持った臨床工学技士は今後ますます必要とされる事と思います。

[1]能島暢呂, 土木学会地震工学委員会「相互連関を考慮したライフライン減災対策に関する研究小委員会」改め「ライフラインの地震時相互連関を考慮した都市機能防護戦略に関する研究小委員会」:東日本大震災におけるライフライン復旧概況(時系列編), 2011.


松井 智博 准教授

2006年阪和記念病院に入職、2014年臨床工学技士長兼医療機器安全管理責任者を経て、2021年12月より本学准教授。

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