臨床工学技士の働くフィールド
医療機器の“スペシャリスト”、最先端の装置を操る“エンジニア”、不安を抱える患者に寄り添う“ケアラー”、まだこの世に存在しない新製品を開発する“パイオニア”。数限りない役割が求められる、臨床工学技士。病院をはじめ、医療機器メーカー、公的機関など、臨床工学技士の活躍フィールドは実に多彩です。
01 病院
医療技術の進歩、高度化が進むなか、医療機器の専門知識を備えた臨床工学技士は、患者の命を支えるチーム医療には欠かせない存在です。医療機器の操作はもちろん、保守点検も自ら行い、病院での医療基盤を支えています。
02 医療機器メーカー
臨床工学技士ならではの視点や専門知識は、医療機器メーカーの研究・開発でも重視され始めています。今はまだ存在しない新しい医療機器の創出に、臨床工学技士が関わる場面が増えており、今後も研究・開発分野での活躍が期待されています。
臨床工学技士の役割
- 研究開発職
- 技術営業職(サービスエンジニア)
03 公的機関
臨床工学技士の知識や技術は、国の様々な公的機関でも発揮されています。例えば、医薬品や医療機器などの品質や有効性などを評価する組織「医薬品医療機器総合機構(PMDA)」では、機器の市販後の安全対策業務などに従事しています。
臨床工学技士の役割
- 機器の検査
- 医療の安全対策の整備
- 専門的な活動の支援
- 健康被害救済
手術室
麻酔器、除細動器、人工心肺装置など、手術室では多種多様な医療機器が必要です。臨床工学技士は、治療に合わせて機器を事前に準備し、手術中は医師や看護師と連携を図りながら、的確な機器の操作を行います。各機器類の点検や保守・管理も業務の一環です。
集中治療室・救急救命室
命の危機にある患者を治療する集中治療室や救急救命室では、人工呼吸器など、生命を維持するための装置が用いられます。臨床工学技士は、医師や看護師と連携し、患者の様子を確認しながら、生命維持管理装置などを適切に操作します。
高気圧酸素治療室
「高気圧酸素治療」は、患者に高気圧のタンクに入ってもらい、酸素を吸入して血液中の酸素を増やし、ダメージを受けている組織を回復させる治療法です。臨床工学技士は、患者に事前説明を行い、治療中は機器を操作し、経過を記録します。
心臓血管カテーテル検査室
心臓病の診断をするための検査方法で、手術の適 応、術式を決定する重要な検査です。臨床工学技士は、機器の事前準備を行い、治療中は医師や看護 師と連携を図りながら機器を操作し、検査一連の内 容をデータに記録します。緊急時には補助循環装置 やペースメーカーなどを操作することもあります。
医療機器の中央管理室
人工呼吸器、患者監視装置、保育器など、病院内には多種多様な医療機器が存在します。臨床工学技士は、常に安全に利用できるよう、日々の保守・点検を行い、効率的に適切な運用ができるよう管理します。
ペースメーカー業務
不整脈や心不全の症状をお持ちの方や、投薬での治療が困難な方の体内にペースメーカーを移植した後の定期点検を行います。また、ペースメーカーを植え込む際の外科手術が安全に行えるように、立ち会い業務も行います。
血液浄化療法室
体内の老廃物などを排出する機能が働かなくなった患者に、血液透析療法や血漿(けっしょう)交換療法などの血液浄化療法を施します。臨床工学技士は、医師や看護師と話し合いながら、患者の体調確認を行い、透析開始時の穿刺(せんし)や人工透析装置の操作などを担当します。
※穿刺:血液や体液などを採取するために身体に針を挿入すること
臨床工学技士は現場でどんな活躍をしているの?
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臨床工学技士に向いている人
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「人を助けたい」
という思いを
持っている人医療職の中でも手術や人工透析など、患者さんの命や健康に直接かかわる業務が多い職種です。どんな時も人を思う気持ちがある方はやりがいを感じられるお仕事です。
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新しいことを
常に学んでいく姿勢を
とれる人医療機器は日々進化しています。新しい機械にも速やかに対応し、他の医療スタッフへ説明したり提案をします。新しいことに興味を持ち、自主的に学べる方はその力が生かせる仕事です。
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冷静に丁寧に
仕事に取り組むチカラが
ある人手術室や集中治療室などで突発的な事態が生じても冷静に医療機器の操作等に対処する必要があります。また、病院内にある多くの医療機器がいつでも適切に使用できるよう、臨床工学技士は常に丁寧に機器の保守管理等に努めることが求められます。
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他者と協働して課題解決
に取り組む姿勢が
とれる人医療の現場では、患者さんの命や健康を守るために、同職種の人とも、他の職種の人とも、さらに病院の内外の様々な方々との間でも、いろんな形で連携協力していくことが求められます。臨床工学技士は医療機器を扱いますが、その過程・背景には多くの人との様々な協働、コミュニケーションが必要なのです。
臨床工学技士の将来性は?
臨床工学技士の実情
臨床工学技士は今後ますます需要が増えることが予想されます。
AI・高度医療の発展
AIが活用された医療機器も生まれ、今まさに進歩を遂げている医療機器分野において、医学・理工学を体系的に学んだ臨床工学技士ならではの視点が求められています。関連する知識を学び、幅広い分野で活躍できる技量を身につけましょう。
業務内容の拡大
現在、医療現場では医師や看護師の働き方改革が課題となっています。その一環として、様々な業務が他の医療従事者にも認められるよう、法改正が進んでいます。臨床工学技士もその担い手の一人として注目されており、医師の指示の下、内視鏡手術中のビデオカメラ操作や麻酔科アシスタントを行うことができるようになり、臨床工学技士の活躍の場は広がり続けています。
臨床工学技士をめざした理由は?
- 最初は看護師を目指していましたが、医療系について調べる中で臨床工学技士を知りました。臨床工学技士は、病院以外にも医療機器メーカーなどの企業でも活躍できる点に魅力を感じました。
- 医療ドラマの影響で、手術に携わる仕事に憧れがありました。臨床工学技士は手術中に医療機器の操作を行うので、自分のイメージしていた姿とぴったりでした!
- 医療従事者の家族から「将来性が高い医療職」として勧められたのが臨床工学技士でした。目の前の患者さまはもちろん、医療機器の開発を通して、医療の発展にも貢献できる点が臨床工学技士ならではの良さだと思います。
- 診療放射線技師を目指して色々と調べている中で、臨床工学技士を知りました。臨床工学技士は扱う医療機器の種類が多く、長く働いていても飽きずに仕事に向き合えそうだと思いました。また、放射線技師よりも臨床工学技士の方がまだ一般に知られていないので、ライバルが少なく希望の就職先に行きやすいと思ったからです。
臨床工学技士になるには?
国家試験合格をめざしましょう
臨床工学技士の国家資格を取得するためには、養成校(大学、短期大学、専門学校)において厚生労働大臣が指定する科目を修得する必要があります。その後、年に一度実施される国家試験を受験し、合格することで臨床工学技士の国家資格を取得することができます。