今日は医療現場の災害対策についてご紹介したいと思います。
大きな地震が発生した時にニュースで血液透析施設への給水作業などが取り上げられるのを見たことがある方は多いのではないかと思います。
臨床工学技士の多くが関わっている血液透析では、一人の患者様が週に3回、1回あたり4時間にわたる血液浄化療法を受けています。
生命の維持には不可欠な治療ですが、透析器、血液回路、薬剤などの「大量の物資」、透析液や配管消毒に使用する「大量の水」、透析用監視装置、透析液供給装置などに使用する「大量の電力」が必要な特殊な環境となっています。
災害によるライフラインの途絶は、透析治療が出来なくなることを意味しており、事前の対策が非常に重要となります。

近年では医療機関でも大企業が取り入れている事業継続計画(Business Continuity Plan:BCP)を災害対策として導入する施設が増えています。
BCPは組織の災害に対する虚弱性をあらかじめ把握して、災害時に少しでも良い医療が提供できるように計画を立てることです。
東日本大震災後の計画停電に伴う医療機器の使用状況に関する調査アンケートの記入者では、最も多かったのが臨床工学技士(27%)であり、臨床工学技士は医療現場におけるBCPの中心にいる職種の一つと言えます。

[1] 医療機器産業研究所:リサーチペーパーNo.4, 計画停電(発電容量不⾜)に伴う医療機器の使⽤状況に関する緊急調査, 2011
医療現場の災害対策において、臨床工学技士は非常に重要な役割を担っています。
次回のコラムでは、具体的にどのようなことを行うのかをご紹介したいと思います。
松井 智博
滋慶医療科学大学 准教授
兵庫県立大学大学院応用情報科学研究科応用情報科学専攻博士課程修了(博士(応用情報科学))
2006年阪和記念病院に入職
2014年臨床工学技士兼医療機器安全管理責任者を経て、2021年12月より現職
