
医療現場で、血液浄化装置や人工心肺装置などの生命維持管理装置の操作・保守点検を担う臨床工学技士として働くには、国家資格を取得する必要があります。では、国家資格を取得するためにはどのような試験に合格すればよいのでしょうか。また、難易度や合格率はどれくらいなのでしょうか。これから臨床工学技士を目指す方が気になる出題傾向も交えて、国家資格取得までの道のりを解説します。
臨床工学技士の資格を取得する方法
臨床工学技士は、臨床工学技士法第2条第2項で「医師の指示の下に、生命維持管理装置 の操作及び保守点検を行うことを業とする者をいう」と規定されており、国家試験を受けて、必要な知識と技能を備えていると判定された人が臨床工学技士の資格を取得できます。
そのためにまず必要なのが、国家試験の受験資格を得ることです。高校卒業後、下記のような教育機関で厚生労働大臣が指定する科目を一定期間履修すると、国家試験の受験資格を得られます。
大学 | 4年 | 臨床工学科、医用生体工学科など |
短大 | 3年 | 臨床工学科 |
専門学校 | 3〜4年 | 臨床工学科、臨床工学技士科など |
専攻科 | 昼間1年、夜間2年 | 医療系国家資格養成所や大学で2年(高等専門学校は5年)以上修業し、厚生労働大臣指定の科目を履修 |
専攻科 | 昼間2年、夜間2年 | 医療系国家資格養成所や大学で1年(高等専門学校は5年)以上修業し、厚生労働大臣指定の科目を履修 |
試験の申し込みや日程
午前2時間半、午後2時間半の2部構成になっているため、遠方の方は前日から宿泊する必要があります。1日5時間の試験はなかなかハードです。体調をしっかり整えて本番に臨みましょう。
【試験日程】3月上旬の日曜日
【試験時間】 午前9:30〜12:00 、午後13:30〜16:00
【試験場所】 北海道、東京都、大阪府、福岡県
【受験申し込み】公益財団法人医療機器センターに願書を請求し、12月に同センターに提出して申し込む
【合格発表】 3月下旬に、厚生労働省ホームページの「資格・試験情報」ページまたは公益財団法人医療機器センターのホームページで発表
【受験料】 30,800円
詳しくは公益財団法人医療機器センターのウェブサイトをチェックしましょう。
国家試験の合格率
厚生労働省の「第37回臨床工学技士国家試験の合格発表について」によると、2024年の合格者数は2068人、合格率は78.6%でした。直近5年間の合格率は80%前後で推移しており、大学や短大などの教育機関でしっかり対策をする必要はあります。
なお、5年間の受験者数と合格者数、合格率は下記のとおりです。
受験者数 | 合格者数 | 合格率 | |
2024年(第37回) | 2,630名 | 2,068名 | 78.6% |
2023年(第36回) | 2,706名 | 2,311名 | 85.4% |
2022年(第35回) | 2,603名 | 2,096名 | 80.5% |
2021年(第34回) | 2,652名 | 2,232名 | 84.2% |
2020年(第33回) | 2,642名 | 2,168名 | 82.1% |
・試験科目や出題傾向
問題数は午前90問、午後90問の合計180問あり、1問1点の180満点です。このうち108問以上、約6割正解すれば合格できると言われています。
・出題される問題の傾向
出題範囲やレベルは、大学や短大などで学ぶカリキュラムに沿ったものになっており、極端に難しい問題は出題されません。また、数学や英語などの一般科目は含まれません。ただし、専門科目は「医学概論」「医用電気電子工学」「生体物性材料工学」「臨床医学総論」など9つの領域にまたがり、医学と工学の両方の知識が問われます。どちらも基礎知識がしっかりと定着していることが大切です。
・問題は記述ではなく選択式
記述式の問題はなく、全て五者択一のマークシート方式です。解けなくても解答欄を埋めることはできるものの、勘に頼らず、知識を身につけた上で解答できる力を備えておくことが大切です。日々、コツコツと勉強しておけば知識が定着し、自信を持って解答できるでしょう。
・おすすめの試験対策
果的な試験対策になります。5年間の過去問題を解いておくと、問題の傾向を知ることができ、自分の理解度や得意・苦手分野も見えてきます。苦手分野の克服が難しいと感じたら、そこに時間をかけるよりも得意分野や正答率の高い問題を優先的に解くことで合格範囲を目指すことができます。
公益財団法人医療機器センターのウェブサイトに過去5年分の試験問題が掲載されているので、受験前はぜひチェックを。
また、定期的に実施される模試を受けるのもおすすめです。本番さながらの緊張感の中で問題を解くことで、国家試験当日の良い予行練習になります。国家試験は60%で合格できると言われていますが、模試などでは余裕を持って65〜70%程度の正答率を目指しておきましょう。
滋慶医療科学大学の国家試験対策
て、これらのデータを活用した合同模擬試験やオリジナル教材などの国家試験対策で学生の合格をサポートしています。
・模擬試験で現在地を確認
定期的に実施される模擬試験で弱点や到達度を確認し、その結果をもとに、どこに重点を置いて勉強すればよいかを担当教員がアドバイスします。ポイントを絞ることで、効率よく国家試験対策を進めることができます。
・「J-WEB(eラーニング)」でいつでも復習
過去問題や模擬試験を参照できるWebサイトです。パソコンやスマートフォンからいつでも試験対策を行えます。
国家試験前の取得がおすすめの資格
臨床工学技士の国家資格は働く上で必須ですが、他にも、国家試験の受験前にぜひ受けておきたい資格があります。
・「第二種ME技術実力検定試験」
しておくことをおすすめします。ME2種に合格できなければ国家試験の合格も難しいため、国家試験合格の登竜門とも言われる合格必須の試験。取得しておくと就職活動でも有利です。本学でも、学内対策講座や学内模試を実施し、試験合格をサポートしています。
・「医療機器情報コミュニケーター(MDIC)」
日本医療機器学会が認定する資格で、試験は毎年1月に実施されます。「医療概論」「臨床医学」「臨床工学」「医療情報」の4科目から出題されます。国家試験と同様の五者択一方式で、出題範囲も重なるため、模擬試験としても活用できます。
・在学中に取得できる資格は他にも
本学の在学中には、上記の資格以外に「技術英語能力検定」「日本医学英語検定試験」「医療情報技師」「ITパスポート」「心電図検定」「データサイエンティスト検定(リテラシーレベル)」などの資格取得が可能です。
なお、実務経験を積み講習を受講することで受験できる「透析技術認定士」など、就職後のキャリアアップにつながる資格もたくさんあります。働きながら学び続け、専門性を高めていくことでキャリアとスキルを向上させられます。
【資格取得サポート】 https://www.juhs.ac.jp/career-qualification/qualification/
基礎をおさえることで資格取得の未来が見えてくる!
臨床工学技士の国家資格を取得するためには、医学と工学の両方を学ぶ必要があり、多岐にわたる知識が求められます。そう聞くと、「勉強が難しそう」と感じるかもしれませんが、問題はカリキュラムの範囲から出題されるため、「基礎をしっかりおさえる」「得意分野で確実に点数を取る」ことで合格に手が届きます。臨床工学技士として働く未来も現実のものとなるはず。ぜひ挑戦して、これからの医療を支える存在を目指してください!