「医療職に興味はあるけれど、人と話すことにはあまり自信がない」
「臨床工学技士はチーム医療に関わると聞いたけれど、コミュニケーションが得意でないと難しいの?」
臨床工学技士を目指す高校生の中には、このような不安を感じている人もいるのではないでしょうか。
結論からいうと、臨床工学技士に必要なのは、誰とでもすぐに打ち解けられるような「話し上手」であることではありません。
前に出て場を盛り上げることよりも、相手の話を正しく聞き、必要な情報を正確に伝え、分からないことをそのままにしないことが大切です。
臨床工学技士は「機械だけ」を相手にする仕事ではありません
臨床工学技士は、人工呼吸器や人工心肺装置、透析装置など、生命を支える医療機器の操作や保守点検を担う医療専門職です。
医療機器を扱う仕事というイメージが強いため、「機械に詳しければ、人と話すことは少ないのでは?」と思われることもあります。
しかし、実際の医療現場では、臨床工学技士が一人だけで判断して仕事を進めるわけではありません。
医師や看護師をはじめとする医療スタッフと、患者さんの状態や医療機器の情報を共有しながら、安全に治療を進めます。
臨床工学技士法でも、臨床工学技士は業務を行うにあたり、医師などの医療関係者と緊密に連携することが定められています。
医療チームを少し後ろから支える「縁の下の力持ち」
臨床工学技士は、医療チームの中で「縁の下の力持ち」と表現されることがあります。
患者さんの前でいつも中心になって話すというよりも、医療機器が安全に動き続ける環境を整え、医師や看護師が安心して治療にあたれるよう技術面から支える仕事です。
- 医療機器に異常がないか事前に点検する
- 治療中の機器の状態を確認する
- トラブルが起きたときには原因を調べ、必要な対応を行う
大きな問題が起きる前に準備し、患者さんからは見えにくいところで安全な医療を支えていることも少なくありません。
そのため、人前に立って自分が中心になることよりも、少し後ろから周囲を支えることにやりがいを感じる人にとって、臨床工学技士は魅力のある仕事といえるでしょう。
ただし、「後ろから支える」ということは、何も話さなくてよいという意味ではありません。
医療機器の専門家として気づいたことがあれば、医師や看護師にきちんと伝える必要があります。必要な場面では、自分の専門知識をもとに意見を伝えることも、縁の下の力持ちとしての大切な役割です。
臨床工学技士にコミュニケーションが必要な3つの場面
では、実際にどのような場面でコミュニケーションが必要になるのでしょうか。
1.医師や看護師に医療機器の状態を伝える
人工呼吸器や人工心肺装置などを使用する現場では、機器の設定や作動状況、アラームの内容などを医療スタッフに正確に伝える必要があります。
このときに求められるのは、会話を盛り上げる力ではありません。「どの機器に、どのような変化が起きているのか」「確認した結果、問題があるのか、ないのか」を整理して伝える力です。
特に手術室や集中治療室などでは、短い時間で必要な情報を共有しなければならない場面があります。長く話すことよりも、必要なことを簡潔に、正確に伝えることが重要です。
2.患者さんに分かりやすく説明する
臨床工学技士は、患者さんと直接関わることもあります。例えば血液透析では、患者さんが定期的に治療を受けるため、同じ患者さんと長く関わる場合があります。
患者さんの中には、治療や医療機器に不安を感じている人もいます。専門用語を並べるのではなく、相手の様子を見ながら分かりやすく説明することが大切です。
ここでも、話題が豊富であることや、面白い話ができることは必要ありません。患者さんの話を落ち着いて聞き、安心して治療を受けられるように丁寧に対応することが求められます。
3.医療機器を安全に使うための情報を共有する
臨床工学技士は、医療機器の操作だけでなく、点検や管理も担当します。
機器に不具合が見つかった場合には、その機器を使用する医師や看護師などに状況を伝えなければなりません。また、医療スタッフに機器の正しい使い方や注意点を説明することもあります。
自分だけが機器の状態を理解していても、情報が周囲に伝わっていなければ安全な医療にはつながりません。臨床工学技士にとってコミュニケーションは、医療機器と患者さんの安全を守るために必要な仕事の一部なのです。
「話し上手」でなくても身につけられる3つの力
臨床工学技士を目指すうえで意識したいのは、次の3つです。
聞く力
コミュニケーションというと「自分が話すこと」を想像しがちですが、相手の話を最後まで聞くことも重要です。何を伝えようとしているのかを落ち着いて聞くことが、正確な対応につながります。
正確に伝える力
医療現場では、曖昧な伝え方が誤解につながる可能性があります。緊張しやすい人でも、報告する順序や確認する項目を身につけることで、少しずつ対応できるようになります。
質問・確認する力
分からないことを推測だけで進めるのは危険です。判断に迷うことがあれば、周囲に確認する必要があります。質問することは、安全を守るために必要な行動です。
コミュニケーションは大学で学びながら身につけられます
コミュニケーション力は、生まれつきの性格だけで決まるものではありません。
大学での授業や実習、学生同士のグループ活動、病院での臨床実習などを通して、少しずつ身につけていくことができます。
滋慶医療科学大学の臨床工学科では、医学と工学の知識だけでなく、医療現場でさまざまな専門職と協力するための「多職種連携論」なども学びます。
学内実習でも、学生同士で確認や報告をしながら医療機器を扱います。最初から上手に話せる必要はありません。授業や実習の経験を重ねながら、医療人として必要な伝え方を身につけていきます。
大学生活の中で経験を重ねられる場面
- 医療機器を使った学内実習
- 学生同士で取り組むグループ活動
- 医療職同士の連携を学ぶ授業
- 実際の医療現場で行う臨床実習
まとめ:人と話すことが得意でなくても、臨床工学技士は目指せる
臨床工学技士は、人とまったく話さずにできる仕事ではありません。
医師や看護師との情報共有、患者さんへの説明、医療機器の安全な使用に関する報告など、さまざまな場面でコミュニケーションが必要です。
一方で、誰とでもすぐに仲良くなれることや、大勢の前で上手に話せることが必須ではありません。
前に出て周囲を引っ張るというよりも、医療機器の専門家として、少し後ろから医療チームを支える。必要なときには、確認したことや自分の意見を正確に伝える。
それも、臨床工学技士に求められる大切なコミュニケーションの形です。「人と話すことが得意ではないから」と、臨床工学技士への道を諦める必要はありません。
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